82歳の体力に勝てない58歳の私

体力も食欲も母の方が上。母には一生かなわないのだ


82歳の母は長年畑仕事をしているから体力があるし、趣味にも遊びにも積極的である。

数年前から腰を悪くし、今年から杖を使って歩くようになったが、杖さえあれば私より歩くのが速い。
対して私は家の中でダラダラしているのが最高だと思っていて、家事や仕事の他は1歩でも歩きたくないというぐうたらな人間である。
そんな私が母の行動についていくのはとても大変なのだ。

先日、実家から母が遊びに来た。滞在は1週間。新幹線のチケットを送ってさえあげれば、新幹線+在来線で片道約3時間の道のりもへっちゃらである。
お土産の食料をたくさん詰め込んで、片手では持ち上げられないくらいに重くなった高齢者向けのキャリーバッグを「杖」代わりに押しながらやってきた。

お土産の食料の他にも自分の畑で育てているシソ、ネギ、ニラを根っこごと持ってきて、家について早々植えたし、小松菜と春菊の種も持ってきて私の小さな家庭菜園にまいたので、庭が一気に賑やかになった。

夜9時には寝てしまうが朝5時には起きて体操をしている。骨強化のために「踵落とし(つま先立ちになり、そこから踵を床に落とす運動)」という体操をするが、朝から家が揺れる。

今年になってガラケーからスマホに変えた。LINEのメッセージの送り方は同居する私の弟や母の妹に聞いて覚え、私の家に滞在中は、LINE通話の方法、写真の保存方法、グーグルの音声検索方法を勉強し、毎日大相撲の取組結果を音声検索で調べていた。次の日になると忘れちゃうので、一生懸命メモに取っていた。

そしてずっと喋っている。こちらの話など全く聞いていない。飼っているメダカにも話しかけている。喋りたくてたまらないようである。

食欲も旺盛で、私よりも孫(私の子供達)よりもたくさん食べる。
「とんかつ」に始まり、「お刺身」「ステーキ」「お寿司」、「うどん」「すいとん」「ピザ」、デザートには「ケーキ」だ「お饅頭」だ、となんだかんだとリクエストするので、言われるままに買ったり料理した。

かつては「あんな口を大きく開けて食べるものなんてお行儀が悪くて」と嫌っていたハンバーガーがいつの間にか好きになっていたようで、
「マックのえびフィレオバーガーを食べたい。ポテトはもちろんMサイズ」と言うので買ってきたら、大きな口を開けて「おいしい〜」と頬張っていた。

ビールはもう飲めないけどノンアルコールビールは毎晩欠かさない。
食事の合間にも、「かりんとう」や「さきいか」を食べている。
食べ物を時間を空けずに食べつづけると口の中が荒れてしまう私は、母に付き合っていたら当然のごとく口の中が荒れに荒れてしまった。

薔薇がきれいな公園に連れて行った時は、電車とバスで片道2時間もかかるのに、着いたら腰の痛いことなど感じさせない歩きっぷりで園内を1周し、昼食に天ぷらと焼き魚の定食をペロリと平らげ、その後さらに園内の薔薇や花々を歩いて見て回り「満足以上!」と喜んでいた。

1週間後、「あ~好きな物たくさん食べた!満足満足」と帰った母は、帰宅早々畑と趣味の花の具合をパトロールしたそうだ。
翌朝からは庭の草取りに精をだし、早速母の姉に頼まれて、彼女を車で病院に連れて行っているらしい。

そんな母と過ごした1週間が賑やかで楽しかったので、しんとした部屋にいるのがとても寂しくなってしまったが、実は母が帰った後、私は疲れが出たのか3日間寝てばかりだった。夜も9時頃には寝てしまい、朝も眠くてなかなか布団から出られず、日課のラジオ体操をサボってしまった。昼間も眠くなって昼寝ばかりしていた。

母には一生かなわないのだ。

~母の日に、精一杯の敬意を寄せて~