ほんの小さなやり取りだけで1日が肯定され、否定される

見た目は怖いが、とても優しい人だったアーティストに遭遇

先日聴いてきたピアノのコンサートの帰り。帰りの特急電車で予約しておいた指定席に座ろうとしたら、私の席に
「長髪の強面のカウボーイハットをかぶってギターケースを抱えた個性的な服装の年配の男性アーティスト(と呼ぶ)」
が座っていた。
しかしそこは私の席のはず?

自分のチケットをもう一度見て、車両番号を見て、座席番号を見て、確かにそこは私の席。
さらに、もう一度同じ確認をしてみたが、やっぱりそこは私の席。
どう見ても怖そうなアーティストが私の席に座っている。

「そこ、私の席です」って言わなくては。でも

何言ってんだよ。ここはオレの席だよ

てキレられるとか、

チッ💢

とか、されるかもしれない。
ひょっとして私が席を間違えているのか?
イヤイヤ、でもやっぱり私のだよね、ともう一度チケットと座席を確認して、恐る恐る

「スミマセン、ここ、私が予約した席なんです」と声をかけたところ、

あっ!それは申し訳ありません!今どきます!!

拍子抜けするほどあっさり、すぐに移動してくれたのだよ。
そんなもんだから、こちらも思わず
「あっ、イエイエ。こちらこそありがとうございます」なんてお礼を言ってしまった。
ホッとしたよ。ホントにもう。

これだけでも今日はいい日だった。
全然知らない人だけど、こんなにイイ人に会えるなんて、コンサートに行って本当に良かった、と脈絡のないことを思って席につき、素晴らしかったピアノの余韻にひたりながら帰途に着いた。

私がなぜこんなに怖がったかというと、以前、似たような事があり、なんとも後味の悪い思いをしたトラウマがあったから。

去年聴きに行ったコンサートで席に着こうとしたら、隣の席の高齢の女性が
「ここはあたくしの友達の席よ」
「あなた、私の友人のチケット持ってるでしょう!(ご友人はトイレにチケットを落してきたことをホール入り口で気付き、取りに戻っていたらしい)」

と私を泥棒呼ばわりしギャンギャン騒ぎ、席への通り道に足を突き出して通せんぼをして、私を席に着かせてくれなかったという忌まわしい出来事。

もちろんそこは私が自分で取った私の席で、その人の勘違いだったのだが、
「あらぁゴメンナサイ、オホホ」
の一言で済まされた私は、ホール天井を突き抜けた怒りをなんとか表面には出さずに抑えたことには成功したが、その人の隣で二時間のコンサートなんて楽しむどころではなかった、という怖い思いをしたから。

今回この忌まわしい記憶が蘇ってしまい、また「ここはオレの席だ」
と言い張られたらどうすんのよと、声をかける事に相当悩んだんだよね。
3回もチケット見直しちゃった。

ほんの小さなやり取りだけで1日が肯定される。または否定される。人って周りの行動に翻弄される生き物だとつくづく思う。

先日は、全く理不尽でお門違いなクレームを上司と私が受け、落ち込む必要なんて全くないのに、それがよりによって金曜日だったもんだから「ギャーギャー」言われたショックを週末まで引きずり、土日の休日がどんよりとなってしまったことがあった。
週明けに出勤したら、上司も同じく「半分死んでいだ週末」だったそうだ。

もうじき還暦だし、人生の残された時間だって限られてるでしょ。こんなことで憂鬱になりたくないのにさ。

それはそうと、人を外見で判断してはいけない。ですわね。いやあ、イイ人だった。